東京高等裁判所 昭和41年(ラ)783号 決定
本件記録によれば、別紙目録(二)記載の建物につき鑑定人高岡一夫に命じた評価鑑定の結果に基づき、最低競売価格を金四〇三、六五〇円と定めてこれを競売期日の公告に掲げ、相手方松田重信に対し金一一〇万円を以て競落を許したものであることが認められる。ところで競売の目的となつた物件は、本件建物のほか別紙物件目録(一)記載の宅地であつて、その建物と敷地の所有者は同一であるから、これを個別に競売するとすれば、当然法定地上権の問題を生ずべく、したがつて宅地は地上権の負担あるものとし、建物については地上権を伴うものとして適正に評価すべきである。前示鑑定人の評価をみると、土地については更地の取引事例に基く比準価格を標準とし、鑑定人の評価先例、固定資産評価額および地元精通者意見を参考とし、建物については復成式評価法による復成現価に個別的要因、維持管理の状況を考慮決定したというのみで、地上権価格を鑑定の考慮に入れていないこと明らかである。右鑑定人の評価書によると前示宅地は更地として金一、五九五、五五〇円と評価されている。そして住宅地の場合借地権と底地との価格の比率は通常六対四ないし七対三に評価されているので、これを基準として計算してみると本件建物はすくなくとも一三〇万円を下らないものと推認できる。前示鑑定人の評価はその鑑定の基礎たる事項について重大な過誤があり、最低競売価額決定の資料となすべからざるものであるから、原裁判所がこのような評価に基づき最低競売価額を定めて公告したのは違法であつて、ひつ竟正当な手続により適法な最低競売価額を定めなかつたのと実質において同一に帰着し法律上の売却条件に違反するものといわざるを得ない。
(鈴木信 岡田辰 館)